Noah Fast 開発ストーリー
RIDLEY史上最高のフィッティングを備え、最速のロードバイクを設計する、それが「Noah Fast」というプロジェクトの目標でした。
これを念頭に置いて、研究開発エンジニアは空気力学の限界に挑むため最善の努力を尽くしました。全く新しい物を製作する必要があり、これまでに行われたことのない新たな挑戦が幕を開けたのです。
新しいNoah Fastはバイクの設計を細部に至るまで徹底的に見直し、ゼロから再構築されました。バイクの良さを際立たせるため、専用設計されたパーツの組み合わせでバイク全体を設計するというアイデアでした。
プロジェクトの初期段階ではさまざまな問題解決が検討されました。まずはスケッチから3Dモデルを起こし、考えられるデザインの方向性を多数作製。じっくりと時間をかけ、さまざまな角度から検討を重ねて作り上げた設計を基に、最終的なデザインの模型が完成しました。
RIDLEY独自のテクノロジーであるF-TubingとF-Surface Plusが、このプロジェクトに大きな役割を果たしました。前モデルのNoah SLで既に採用されていたテクノロジーが、さらに最適化されフレームとフォークのさまざまな箇所に適用されました。

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F-Tubing
適切なチューブ形状やチューブセクションはバイクの性能を左右する重要な要素の一つです。そしてプロバイクの製作において、エアロダイナミクスは最も重要な指標となります。従来のティアドロップ(涙の滴)形状は垂直方向からの気流に対し空気抵抗を低減しますが、気流が特定の角度でチューブに当たると発生する乱気流を抑制することができません。
F-Tubingはカムテール形状にすることであらゆる角度からの気流に対して優れたエアロダイナミクス効果を発揮します。【従来のティアドロップ形状】
従来のティアドロップ形状は垂直方向からの気流に対して優れた空力性能を発揮しますが、ヨー角10度の小さな角度では空気抵抗が大幅に増加します。
【F-Tubing形状】
カムテール形状によりヨー角15度でも乱気流は抑制され、空気抵抗を大幅に低減します。
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F-Surface Plus
乱気流をさらに抑制させるために開発されたのが、F-Surface Plusテクノロジーです。これは空気抵抗を低減するため、ゴルフボールのディンプルと同様の表面テクスチャー(凹み)を計算されたチューブセクションに配置することです。
この小さな溝を設けることで空気の流れをチューブ形状に追従させる小さな乱気流を生み、気流の乱れを抑制します。チューブ表面に沿ってスムーズに空気を流すことで、空気抵抗を最小限に抑えることができます。
風が強ければ強いほど、このテクノロジーの効果は発揮されます。【従来のラウンドチューブ】
あらゆる風向きで空気抵抗が大きくなります。
【F-Tubing】
垂直方向からの空気抵抗を大幅に減らします。
【F-Suraface Plus】
チューブ表面に沿って気流を整え、空気抵抗を最小限に抑えます。
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F-Steerer
RIDLEYは空気力学の視点からさらに一歩前進しました。D型に成型されたフォークコラムとF-Steererテクノロジーにより、ケーブル類の完全内装化を達成。空気抵抗の低減だけでなく、美しいデザインと軽やかなハンドリング性能を手に入れました。
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コンセプトモデル
初期の設計では基礎となるモデルができあがりましたが、複数回にわたるモデリングが必要でした。プロのバイクに求められる最適なチューブサイズやチューブセクションは日々変化します。
研究開発エンジニアはコンセプトモデルを使用し、全ての技術的決定を検討することにしました。
このモデルは迅速に作製され、CFD(数値流体力学)を用いた空力解析およびCA(E構造解析)による検証のみならず、設計コミュニケーションの手段としても機能しました。 -
検証テスト
CFD(数値流体力学)は流体の流れを数値解析し、CAE(構造解析)は変形や応力を解析する方法です。
フレーム周囲の気流とそれがどのような影響を与えるかを調査、研究するため、エンジニアは何度もテストを繰り返しました。 -
3Dプリント
コンセプトモデルの開発にあたり、考えられる全ての仕様、ジオメトリー、チューブセクションにおいて、最終的な生産モデルが製作されました。
さらにフランダース・バイクバレーの風洞施設を活用してフレームを最大限テストするために、3Dプリントを使い複数の実寸サンプルを製作しました。
数週間にわたるテストを経て、最終的なフレームと専用パーツが完成。最終結果として専用パーツの空気力学的な損失はゼロでした。RIDLEYの研究開発エンジニアは、空気力学的な損失と専用パーツ周辺の空気抵抗を最小限に抑えることに成功したのです。 -
風洞実験
多くの仕様変更を経て設計は生産準備が整い、実際のテスト条件が備えられました。最終的にフランダース・バイクバレーでPIV(粒子画像流速測定法)を使用し、ウィンドトンネルで再度テストされました。PIVは流体中に混入したトレーサー粒子の粒子画像により、2次元平面内の速度および方向を非接触で求めることができる流体計測手法です。目に見えない気流・水流の動きを可視化し解析を行います。
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ゴリラの最終テストによりツール・ド・フランスへ
ついに私たちのゴリラ(アンドレ・グライペルのニックネーム)がバイクのテストをする時がやってきました。アンドレ・グライペルはもてる限りのパワーとスプリントの知識を実践し、あらゆる面でバイクを徹底的にテストしました。彼は集中的なスプリントトレーニングにおいてNoah Fastを使用し、その限界を押し上げたのです。
研究開発エンジニアは彼のフィードバックを受け、Noah Fastに最新の変更を加えました。ツール・ド・フランス開幕まであと少し......。わずかな時間の中でRIDLEYの研究開発エンジニアは、アンドレ・グライペルをゾルダーのサーキットに招き最終テストを行いました。エンジニアが最後に聞いたのは、2回のペダルクリック音とタイヤのきしむ音でした。サーキットの周回を重ね、あらゆるコーナーを極限まで攻め込み、アンドレ・グライペルは文字通りNoah Fastと一体となりました。このバイクは、これまでにないほどに風を切り抜ける新しいレベルのエアロバイクへと進化を遂げました。
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